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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2298号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件特許発明の要旨は、中空リンクおよびこれを互いに関節的に、かつ伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回しうべき結合リンクより成る伸延可能なリンクバンドであつて、

(イ) 中空リンクが任意の断面形の円筒状鞘のバンド縦方向において互いに転位された二組により形成されていること、

(ロ) 結合リンクが、バンド縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成され、該結合彎曲片は、各二個ずつその一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接した鞘中に挿入されていること、および

(ハ) 各鞘中には、「結合彎曲片を鞘中に確保し」、かつバンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられていること

の各要件を備えていることにあるものと解せられる。

(二) そして右の(ハ)の要件は、彎曲板発条の特徴を限定し、それがバンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する機能のほかに、結合彎曲片を鞘中に確保する機能をも果たすものであることを明らかにしたものと解せられる。

ところで、右の点につき、本件特許発明の明細書中に用いられている「結合彎曲片を鞘中に確保し」という字句は、技術的表現として、一おう常識的、一般的には、結合彎曲片を鞘の中にしつかりと保持してそれから脱出しないようにすることを意味する趣旨に解される。そして<中略>

これを要するに、本件特許発明における彎曲板発条についての要件として、「結合彎曲片を鞘中に確保し」というのは、例えば彎曲板発条が結合彎曲片に、前者の端部に設けた彎曲端と後者の脚に設けた横溝とによつて、掛合するというのを一つの方法とし、その他その具体的な手段、方法については特に限定することなく、板発条によつて彎曲片を鞘中に確実に保持してその鞘からの脱出を防止し、これによつてリンクバンドの解体を阻止する機能を果たさせることを意味するものと解すべきである。<中略>

(三) 被控訴人は、本件特許発明は、鞘、結合彎曲片および彎曲板発条の三部材のみを用い、彎曲片の脚のカム運動により、リンクバンドにきわめて大きい伸張性および可撓性を持たせるべく、板発条の張力を利用して、右三部材を弾性的に関節連結して成るもので、この点において従前のものと全く異なつた画期的なものであり、このような本件特許発明の基本的発明思想からすれば、板発条によつて彎曲片の鞘からの脱落を防止するというがごときことは、もともと直接かかわることではないのであつて、「結合彎曲片を鞘中に確保し」というのは、右発明思想の本旨に徴し、――「バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する」というに関連して、――「彎曲板発条自体の形状より生じる効張力と結合彎曲片を鞘中に挿入した場合に生じる初張力の総合張力により、彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に弾力的に固定する」、ないしは「板発条の張力によつて彎曲片を鞘中に保持する」という意味に解せらるべきである旨主張し……ている。ところで<証拠>に、本件口頭弁論の全趣旨を合わせると、本件特許発明が、中空筒状の鞘をくいちがいに上下二列に配列し、これを結合彎曲片で結合し、彎曲片のカム作用と鞘に挿入した彎曲板発条の張力による反抗作用を利用して、弾性的に関節連結した構造において全く新規なものであり、そして本件特許発明の主目的、その本質はこの点にあることが肯認されるけれども、被控訴人主張のように、この本件特許発明の本旨に即して確保の意味をその主張のごとく解するためには、出願人の内心の意図はしばらくおき、そのように解すべき趣旨が明細書にあらわされていなければならないのであつて、明細書中の「発明の詳細なる説明」の項における……記載等がこの趣旨を示したものとは見られず、同項のはじめの本件特許発明の構造を説示した部分、図面により実施例を説示した部分および特許請求の範囲の「附記1」の項にくり返されている彎曲板発条と結合彎曲片との掛合の構造についての記載を、単に発明の実施上必要な付加的一手段についてのものと見るべき関係にないことはさきに説示したところから明らかである本件において、たやすく被控訴人主張の発明の本旨にてらし、その主張のごとく解することは、特許発明の技術的範囲の解釈が明細書の記載によつてなさるべきことに反し、他人の産業活動に不測の拘束をもたらすおそれを招くものというべく、被控訴人の右主張は採用できない。

つぎに控訴人は、右の「鞘中に確保し」の意味は「結合彎曲片と板発条とを掛合することにより、前者が鞘中から脱出しないように固定的に取り付けることであるとし……本件特許発明の技術的範囲につき、本件特許発明が要件としているところは、そのほとんどすべてが出願時において公知のものであつて、その新規性は、特許請求の範囲に「……U字形結合彎曲片を鞘中に確保し……する彎曲板発条12が設けられたる」と記載され、そして「発明の詳細なる説明」の項に記載されている、結合彎曲片14の脚15、16に設けた横溝17、18に彎曲板発条12の両端に形成した彎曲端部分13、13を掛合させて、右彎曲片14が鞘10、11から脱出しないようにした脱落防止のための具体的構造にのみあるのであつて、この具体的構造が本件特許発明の要部であり、必須要件であるから、本件特許発明を他と比較するにはこの点を重視すべきであるという(控訴人はこの点の主張(1)において、……図面に記載されたもののみが本件特許発明における権利の対象であるというが、その指摘の記載は、単につぎに記載される要旨の構成部分が、本文の記載全文や図面に示されたようなものであることを示したものにすぎないのであつて、右の記載の故に図面に示された事項の全部が要旨となると解すべきでないことはいうまでもない……。

しかしながら……本件特許発明を組成する部材あるいはこれらを結合した構成の若干の部分について、本件特許の出願時に公知であつたものがあることは窺えないではないにしても、本件特許発明がさきに見たごとき構成において新規のものであることは動かすべくもないところであるから、控訴人の右主張は前提において失当であつて採用できない。(古原勇雄 杉山克彦 楠賢二)

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